横浜 ホテルの珍しい効果

「おとこ街」は、上野、浅草が異国情緒で下位に顔を出しているが、新宿、池袋はまったく対象圏外と言っていいくらい人気がない。 もうひとつ、注目していただきたいことがある。
それは、人気地区のほとんどが、方角で言うと東京の南西四分の一に集中しているということだ。 つまり、上位にあがっている街のほとんどが、山手線を巣鴨から品川あたりで縦に二つ割りにしたら西側に入るし、中央線で横に二つ割りにしたら南側に入る地域にある。

そのほかの四分の三に含まれる街は、中央線の線上を入れても、ずっと得票数が少ない。 なぜ、東京で人気のある街は南西に集中するのかつてことは、次のでゆっくり検討することにして、まず街の性別について見ていこう。
なぜ街には性別があるのか?そして、街の性別はどう決まるのか?まず言えるのは、街の性別を決めるのは、その街を歩いている人たちの中で男が多いか、女が多いかじゃないということだ。 このことは、ちょっと後のほうで池袋を例にとって説明する。
でも、街の年齢は、ある程度実際にその街を歩いている人たちの年齢と関係がありそうだ。 どうも、日本人は「街は爺さんになることはあっても、婆さんになることはない」という印象を持っているらしい。
「おんな街」の中でいちばん歳がいっているのは銀座だが、それでも四0・三歳とやっと四代に入ったばかりだ。 それに比べると、「おとこ街」は上野が四六・六歳、浅草が四九・二歳と、ぐっと「高齢化」して中年から初老に差しかかった年格好になる。
たとえば、浅草なんかの場合、文明開化のころまでさかのぼれば、絶対「おんな街」だった経歴を隠しているはずなのに、歳をとるにつれて成熟した「両性具有の街」にはなれずに、性転換して男になってしまったという印象がある。 そして、街が高齢化すると「おとこ街」になる傾向があるということは、新しいものを受け入れる柔軟性とか、流行に対する敏感さとかが欠けている街が「おとこ街」なんだということじゃないだろうか。
そういう意味では、「おとこ街」新宿の年齢イメージが二七歳と若いのは、とってもおもしろい。 大筋では「若い女から出発して、成熟した両性具有か、年とった男か」という変遷をたどる街の歴史の中で、街が「若い男だ」ということは、いったい、どういうことなのだろうか?もちろん、「おじさんに比べて、血の気が多すぎてこわい」ということもある。
実際に新宿のイメージを「こわい一やさしい」という軸で見ると、二位・池袋の「こわい度六二パーセント」を大きく引きはなした「こわい度七六パーセント」の堂々たるトップを確保している。 本当にこわいお兄さんたちの生息分布では、新宿や池袋より低いはずはなさそうな上野(こわい度五九パーセント)、浅草(なんとこわい度ではなく、やさしい度五四パーセント!)は、年のであんまりこわさは感じさせない街になっている。

この調査結果について、「バイアス(偏向)のかかった調査だから、額面通りに受け取るのは危険だ」という反論があるかもしれない。 それは、「『Tky週間」や『東京ウォか。
』のようなタウン情報誌を読みあさるのは、貸家住まいしかできない若い人たちだから、身の程知らずにいい場所に住みたがる。 が、家族を支えて食っていかなきゃならないサラリーマンには、ワンルームでも一万とか一五万とかの家賃がかかる表参道なんか関係ない」といった反論だ。
本当にそうだろうか?実際問題として、持ち家として何十年もローンを払い続けながら住めるところの中から選ばなきゃならないなんてことになったら、はっきり言って夢も希望もないような郊外で、通勤時間も長ければ近所に気のきいた店もないようなところから選ばなきゃならない。 それでも、「住みたい街」は自分のふところ具合を考えて「住める街」の中から選ぶべきなんだろうか?ぼくにはそうは思えない。
住みたい街は住める街の中から選、はなきゃならないって考えかたは、住むといえば真っ先に「持ち家に住んで、そこに骨を埋める」ことを考えてしまう「定住志向」にあまりにもとらわれすぎている。 日本のように中古住宅の売買にいろいろ手数料や税金がかかるところでは、いったん家を持ってしまったら、住み替えるのはロスが大きい。
ずっと住宅地が値上がりをしっぱなしだったころは、「地価の値上がり、七難かくす」で、安く買った土地が大幅に値上がりしてうわものはゼロ査定でも、売れば買った時よりいい家に住み替えることができていた。 しかし、バブルが崩壊して一年、まだまだ当分住宅地の値下がりは続きそうな形勢だ。
そうすると、まず買ったり建てたりした家を売って貸家に逆戻りというのは、まったく現実的じゃない。 とくに、長い元利均等返済のローンで持った家だと、最初の四、五年は利子だけ返しているようなもので、元本は全然減っていない。
だから、売った金で元利耳を揃えて返済できなければ、残債を払いながら家賃も負担しなきゃならない。 ふ?っのサラリーマンには無理だろう。
そうなると、どこかに家を買ってしまったら、そこに永住する覚悟を決めなきゃならない。 最近住宅メーカーもマンション分譲業者もやたらに「永住できる家」を勧めはじめた内情というのは、そういうことなのだ。
つまり、いったん家を買ったらいやおうなく永住せざるをえない人が多いってことだ。 しかも、ふつうのサラリーマンが買える分譲マンションはもちろん、ましてや戸建て分譲住宅ということになると、表参道や代宮山からはあまりにも遠く離れた場所しかない。

そして、いったん住みついてしまったら、絶対自分の家の資産価値を落とすようなことは雪守えない。 どんなに不便で長い通勤時間に苦しんでいても、そんなことを正直に言ったら、ますます自分の家を値下がりさせてしまうから、嘘でも「空気がいい」とか、「緑が多い」とか、「隣近所が親切な人ばっかりだ」とか、株屋仲間で言う「売りたい強気」を押し通すしかない。
これではまるで、家という虎の子の財産が人質に取られてしまったようなもので、この人質があまり大きな損を出さずに「解放」されるまでは言いたいことも言えゃしない。 そんな苦労をして家を持つ必要がどこにあるのか?ぼくは「どこに住みたいか」と聞かれたら、ふところ具合と相談して考えなきゃならないというのは、情けない負け犬の発想だと思う。
西洋のことわざに「猫でも王様は見られる」というのがある。 どんなに身分の低い人間だって、自分の目で王様を見るぐらいのことはできるという意味だ。
同じように、「どんなに貧乏でも、貸家なら人生のうち一度ぐらいはファッショナプルな場所に住める」と考えちゃいけないんだろうか?どうしてもどこか一ヵ所に定着したくて、「なまじ、一度でもいい場所に住んでしまうと、その後で暮らす場所が惨めに見えるからいやだ」という人にまで無理にお勧めする気はないが。 冷静に考えれば、いまの世の中でわざわざ家を持って得になることは何もない。
不況の中で持ち家志向が強くなっていることの説明としては、「ローンはいつか払い終えることができるが、家賃は死ぬまで払い続けなきゃならない」というような理屈が持ち出される。 一見まっとうな理屈だが、じつはローンと家賃の大きな違いを忘れている。

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